星蓮船体験版は以前から入っていたものの、そういえばあんまりプレイしたことがなかったことを思い出し、ちょっとプレイ。
で、弟に以前、残機があまり増えないことを相談して、アイテムを吸わせればいいと助言を貰ったので早速試してみた結果……一面で二機増えました。体験版なのでこれだけ増えた、というのもあるそうですが……どっちにしろ、増えやすいことは判明。
嬉しくなって二面を普通にプレイしていたところ……序盤で、アイテムを上部回収しようとして、敵の出現位置と重なりピチューン。
…………えぇ、やる気無くしましたよ。……タイミング、わりぃなぁ……。
では、昨日のアップの続きということで。
ライターの火種の規模を偽り、巨大な火柱に見せかける。それはフィサが話した翔真さんとの思い出だった。
「……まったく、バカしやがって。これじゃショウを悲しませるだけじゃねぇか」
「……悪かった」
「すみません、フィサさん……」
「まったく……。……命があっただけマシと思えよ」
命からがらといった状態で墓地を抜けだし山道を駆け抜け、今は道沿いにあるバス停まで逃げ延びてきている。手持ちのポピーの種を使って僕とシズクを回復させたはいいが、シズクは未だにベンチで横になってぐったりとしていた。
僕はまだいいが、シズクは僕よりも多くの毒を受けていた。命に別状は無さそうだが、この場から動くことが出来ないため救急車を呼んだ。……問題は、このままミアが追ってこないかということだ。
「それで、フィサはどうして来てくれたんだ?」
「お前らがアタイと話したとき、様子がやけにおかしかったから気になったんだよ。そしたら案の定じゃねぇか……。アタイ自身の存在をただの草と偽って近づけたから良かったものを、ばれてたら全員殺されてたところだ」
「……ごめんなさい、危険な目に遭わせてしまって……」
「この場合はお前ら全員の責任だ。ソラだけの責任じゃねぇ」
そして、術の使える僕が、何もできなかったということも……守ると言ったのに、僕は何もできなかった。もう少し術が上手く使えていれば、シズクもこんなことにならなかったのに……。
「……フィサ……今回のことは、僕の責任だ。僕がもっと花式を使えていれば……」
「そして、お前に無理難題を押しつけて、何も話さなかったアタイの責任。式神のくせに、ショウを助けられずお前らに迷惑掛けたアタイの責任だな」
「……え?」
フィサは自嘲気味に笑いながら、俯いた僕に話しかける。
「それに、危険だってわかっていながらミアに接触しやがったショウの責任。妹に迷惑かけた兄の責任だ。……それと、この問題の発端が一番の問題だ」
「ミア、だな」
僕が尋ねると、フィサは一度頷いた。
「フィサ……こんな場合だけど……いや、こんなときだから、教えてくれ。あいつはなんなんだ? 翔真さんに一体何があったんだ? それがわからないと、僕らも対処できない」
ミアがこの事件の犯人であることはわかる。それに、彼女がシキミの式神であり、『猛毒』の力を扱っているということもわかった。だが、その言動や容姿など、ただの式神というわけではなさそうだ。
僕の質問に、フィサは嘆息した。
「本当はアタイ、このまま話さないつもりだったんだけどな。でも、状況が状況なら仕方がないか。……シズク」
唐突に名前を呼ばれ、シズクはゆっくりと起きあがりフィサに目を向ける。その表情に力はなく、毒の影響がよほど強かったことを物語っていた。
「シズク、これから話すことはショウに関すること、それと……犯人のミアに関わることだ。お前はそれを聴いても大丈夫か?」
それは、シズクの体力を気遣ってのことだったのだろう。彼女は活力の無い表情でも笑いかけて、いつものような声音で言った。
「当然じゃん。むしろ言うの遅いよ、フィサ姉」
「……だから、アタイは話すつもりは無かったんだと……はぁ、毎度お前には調子狂わされるな」
そう言って苦笑するフィサの横で、ソラはシズクの肩を抱いて「無理しないでくださいね?」と言ってベンチに座らせた。
少し間を置いて、静かに目を閉じて、フィサは語り始める。
「さて、どこから話したらいいものか……とりあえず、ざっくり言ってしまえば、ショウはミアに負けた。ミアの標的はショウで、アタイは攻撃を受けて気を失っていた。そうして……アタイが目を覚ましたとき、ショウはもう、毒のせいで目も当てられない状態だった。本当に、負け戦も良いところさ」
それは、あまり思い出したくない記憶だったのだろう。それを語るフィサの瞳は悲しそうで、握る手は白くなるほど硬く握られていた。
「ミアが、フィサと翔真さんのことを死んだと思っていたのは?」
フィサの中でも話が纏まっていないのだろう。そう思い、疑問を持って話を催促する。フィサは「悪い」と謝って続けた。
「アタイの能力だ。ミアにはアタイらが人形になったと偽って逃げてきた」
「……なんだって?」
それはつまり、今まで生存の真実を歪めていたということだろう? それが、今回の一件でばれてしまったということは……。
「もしかしてフィサさんと翔真さんは……」
その疑問を汲み取って、先にソラが質問する。フィサは苦い顔をしていた。
「ばれた。これでもう、ミアから逃げる術は無くなった。これでもし、病院にミアがやってきたらどうにもならない」
「そんな!」
僕のせいだ。そういう気持ちが、胸に突き刺さった。今までのフィサたちの平穏を、僕らが壊してしまった。それは、言い訳の出来ない事実だった。
それはシズクにも言えることだったらしい。彼女は酷く動揺した様子で、項垂れて「ごめんなさい」と小さく呟いた。
フィサは首を横に振った。
「確かに、アタイらは危険。だけどな……それは、お前らだって同じだ。アタイたちは、完全にミアの標的と見なされた。謝るのは勝手だけどよ、まずお前らも気を付けなきゃいけないんだぞ?」
誰かが、息を呑む音がする。あの幼い狂気が頭の中でフラッシュバックする。そもそもの、諸悪の根元。
「根本的に、あいつは一体何者なんだ?」
僕の持っている情報の限りでは、彼女は式神と見て間違いはない。だが、その発言にはどこかおかしなところが目立った。その性格もだが、ずっと一人といったことや、自分を見ろという発言が目立ったこと。そのどれもが、ソラやフィサには無いものだった。
「なぁ、夜車。お前、前にアタイが出したヒント、答えは出たか?」
不意に向けられた質問に、僕は首を振って答えた。
「式神の存在理由だろ? やっぱり、僕には花式の中で、術者が術を使うようになって、その際に生まれる存在としか思えない」
「それがもし、逆だったとしたらどうなる? それが答えだ」
それが答えだと言われても、パッと答えが浮かぶわけではない。なので、少し考えさせてもらう。
花式は、契約時に術者が自分の身を植物に与え、代わりに植物の力を取り込んで植物との関係を持ち、力を使えるようになる物。式神はそのとき、人間の一部を取り込んだ植物が形を成した物。いわば、式神は術者の証である。
それが逆となると……植物が、術者を選ぶ? いや、それは当たり前のことだ。術者は好きな植物でなければ契約できない。なら、何が逆なんだ?
術と式神の関係が逆? 式神があるから、術がある……? 待てよ……だとしたら!
「……式神があるから、術ができた……いや、これだとおかしい。……式神が必要とされて、その際に術式が生まれた? つまり、術式の方がおまけだったと?」
「正解。なら、なんで式神が必要なんだ?」
「…………それは……」
花式が過去に出来た物なら……労働力が必要だった? 人手が足りなかった? 戦力がほしかった? 戦うため……戦う? 何と? 式神を使って戦う必要があるのは……同じような、存在?
「……式神が必要なのは、式神に対抗するため?」
僕の答えに、相づちを打つようにフィサは答える。
「それも、ミアのようなヤツに対して。人間では敵わない力を持った化け物に対抗するために、人間は同じ方法で、人間に有用な式神を作り出した。その際、式神だけでなく契約者も戦えるよう、術式を編み出した。全ては花にもたらされた力……『式神』『術式』の二つから成る、『花式』の成り立ちはこうじゃないか? それが、ショウの推測だった」
「推測だった……だから、それを確かめるために?」
「その通り。ショウのバカは、花式がそうやって出来たと考えて、こういう奇妙な事件に首を突っ込んで……結果、その予想は当たってしまったわけだ。それを止めなかったアタイも同罪だけどな」
そう言って自虐的に笑うフィサ。それに通じる感情があるためか、ソラもひっそりと項垂れていた。
そんな気持ちを振り払って、彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「さて、そこまでがアタイの出したヒントでわかる範囲。じゃあ、なんでミアみたいなのが生まれたのか。これに関しては答えじゃなくて推測のままだから確証はないぞ」
そう言って一呼吸置いて、翔真さんが残した推測を話し始める。
「アタイら式神は、人間の一部を取り込んで植物が人の姿になったもの。だから、ミアのようなヤツらも植物が人間を取り込んだ結果生まれたんじゃないか。それを裏付けるように、ミアの姿形はあの現場で最初の被害者になったやつとそっくりな容姿だ」
「……あ」
ニュースでは奇怪な事件の方が注目されていたが、よく思い返してみれば彼女は被害者と条件が一致する。幼げな女の子で、顔だけならちらりと報道されていたはずだ。……あのときの胸騒ぎはそういったところからも来ていたのか。
「まぁ、わからなくても無理はないな。報道で使われた写真はずいぶん前のもので、普段から独りだったせいで殺害直後の写真は残っていないらしい。死体は……」
「損傷が激しくて、顔がわからなかった……だったな」
「そういうことだ。アタイも後で確認してようやくわかるくらいだった。けど、その被害者の顔に似ていることから考えると……被害者は、あのシキミの木の下で殺された。顔がわからなくなるほどの損傷だ。そこらに血が流れていてもおかしくねぇよ」
……改めて想像すると、吐き気がしてきた。これでは、どちらが被害者かわからない。
「じゃああれか? 被害者の執念をシキミが受け取ったと?」
「そこまではわからねぇ。だけどよ、昔は今より植物があったんだ。ミアみたいなヤツが生まれる条件はいくらでもある。今は街が発展したせいで植物が少なく、ミアのようなヤツらが出る条件が整わなくなった。それこそ、花式が廃れた原因に思えないか?」
「……僕も、その考えが一番妥当だと思う」
どちらにしろ、聞いても嬉しくない話だ。ソラたちと過ごした時間は確かに楽しいが、その式神たちの生い立ちを知ってしまえば、なぜか切なくなる。……彼女たちが、元々化け物に対抗するための技術だとしたら。
「それと、もう一つ廃れた理由が……と、これはアタイの考えだ。ミアと話をしたとき、どうもミアは自分の姿が他人に見えないとか言ってた。アタイらが普通に見えているのは、契約のときに使った人形の力だと思う。で、見えていた人間っていうのは、どうやら最初の殺人者らしい」
「ミアの前身を殺したヤツか?」
「あぁ。そして、アタイらが視認できた。つまり、ミアたちは花式の存在を知っていたり、ミアのようなやつに関わりが無い限り知られないんじゃないか? だからこそ、花式は消えた。姿の見えない驚異は、ただの奇異と片付いてしまう世の中になったから」
……もっとも、花式がどうして無くなってしまったかなんてのは、今ではもう推測するしかない。それに、こういうことは翔真さんの担当だ。
それよりも、僕はミアの視認条件が気になった。僕らのように花式を知っている人物か、殺害した張本人のようにミアとの関わりが無い限り、ミアは見えない。そして、ミアが度々言っていたこと……。何かが、引っかかった。
「フィサ、他に話していないことは?」
尋ねると、フィサは首を横に振った。
「ねぇよ。そもそも、アタイが黙秘してたのはお前らにこのことを教えて、ミアのとこに向かわないようにしたかったからだ。ミアに殺され掛けたなんて知れば、シズクは弔いに行くだろ? そんなことになれば、二次災害もいいところだ」
指摘されたシズクは、力無く笑っていた。
「まぁ、喋らなくても結局こうなったなら、どっちがよかったかわからねぇけどよ」
ともかく、これで僕が知り得なかった情報は全て手に入った。あとは……今後の対策を検討するべきだろうか。
――そう考えた、そのとき。
「……あ、え?」
ふと、何かに怯えるようにソラは片手で帽子を押さえ、不安そうに周囲を窺い始めた。その奇妙な様子に、僕は話しかけずにいられなかった。
「どうした、ソラ?」
「……ユウガさん、まずいかもしれません」
彼女とは思えないほど目つきは鋭くなり、視線は僕らが逃げ延びた道を辿っていた。太陽の関係か、瞳の色も違和感があった。
「私の花言葉が……『私はあなたに結びつく』の力のせいかもしれませんけど……何か、嫌な物が近づいている気がします。一度触れたせいかも……結び損ねたせいかも……力を使い間違えて……」
「おい! どうした、ソラ!」
「遠ざかっていたのに……近づいてきている……そんな気がしてしまうんです。手が引っ張られるような気がして……結びつきそうで、何かが、迫っているんです!」
見ると、ソラの右手が震えているのがわかった。それが式神の特性なのかわからずフィサの方を見ても、彼女もまた動揺した様子をしていた。
……わかることは一つ。ソラが怯えているということ。そして、彼女が怯えるような相手がいるとすれば、それは一人しかいない。
「ソラ!」
僕は怯えるソラの両肩を掴み、真剣な表情で彼女を見た。ソラは一瞬ビクッと肩を震わせたが、落ち着きを取り戻したように俯いた。声音もどこか平静なものに代わり、むしろ申し訳なさそうにトーンを落としていた。
「すみません……私、つい怖がって……」
「気にするな。それで、いきなりどうした?」
「それが……私、ユウガさんを助けようとしたとき花言葉を使うことになったんです。『私はあなたに結びつく』……ですが、結局ミアに結びつくことなく逃げてきたので、ミアの動きに私の花言葉が反応して、結びつこうと手が動いているみたいです」
その言葉を指し示すように、彼女の右手は未だに震えていた。それは化学反応を思わせるような、自分の意図では止められない動作のようだ。
ミアがこちらに向かっているというソラの言葉通りなら、僕らは助からない。
相変わらず力無くベンチに腰掛けるシズクは、どことなく虚ろな瞳でこちらを見ている。
フィサはといえば、ソラの方をジッと見て何かを考えている風である。
……救急車は、まだ訪れてくれない。驚異は近づいている。
「仕方がない……よな」
こういうのは柄ではないのだが、このメンバーで動ける人員を考慮するなら、真っ先に適任となるのは僕しかいないだろう。
「……ユーガ?」
その考えに最初に気付いたのは、どうやら付き合いの長い幼馴染みだった。その力のない声に、僕は苦笑する。
「まぁ、こういう役はお前のせいで慣れてるからな」
「――っ! ユーガ、ダメ!」
「そうは言っても、このまま全滅するよりはマシだろ?」
そのやり取りに、フィサはようやく気付いたようだ。
「待て、夜車。お前じゃミアに会っても、死にに行くだけだぞ?」
「でも、このままじゃ全員死ぬだけだ。ま、ホウセンカの『触れないで』の力を使えば、とりあえずは死なないだろ」
「なら、アタイも……」
「シズクを放って行くのかよ、翔真さんの式神」
「…………そういうお前は、シズクの幼馴染みじゃねぇか」
そうでなくても、誰か一人はシズクを守るためにこの場に残らなければならない。それを思うと、フィサが適任だと思う。彼女は翔真さんを守れなかったから。それだけに、誰かを守ろうとする意思は強いはずだ。
あとは、僕の前にいる少女一人。
「私は一緒に行きますよ。いえ……ユウガさんは、残っていてほしいです」
「そう言うと思った。だけど、これは僕の責任も大きいから、逃げるつもりはない」
ソラは純粋だ。危険と判断しておきながら、それを他人に、ましてや僕に押しつけて逃げることはしないと思っていた。本心としては彼女も危険に晒したくないのだが……今のソラは、どういうわけかミアの現在地を把握できている。そのアドバンテージは大きい。
「というわけだ。フィサ、シズクを頼む」
そうと決まればやることは一つ。ソラの力を借りて、ミアの足止めをすること。シズクが病院に送られるまでの間、ミアを寄せ付けないようにする。
「夜車」
言い止められ、振り返った直後、フィサはポケットの中から小さな紙の包みを取り出していた。それを受け取り、中を確認すると……。
「……種?」
「ホオズキの種だ。ショウもそれを使っていた。何かと役に立つはずさ」
なるほど、翔真さんがミアと対峙したときもこれを持っていたのか。それをフィサが預かっていたと考えれば納得できる。
「わかった、借りておく」
「それと……これはアタイからの頼みだ」
そう言って、彼女は頭を下げた。そうして、今まで見たこともないような神妙な面持ちで、その言葉を口にした。
「機会があればでいい。ショウの敵を……ミアを、殺せ」
背筋が凍り付くほどの視線と、激情を押し殺した表情に、僕は言葉を詰まらせた。
これが、フィサがずっと抱いていた怒りの感情全てなのだろう。思えば、ミアと対峙した時もこうだった。
「こっちは生きるか死ぬかってときに……その頼みは、いつもの嘘と捉えていいか?」
「……どうだろうな」
本心であることはわかった。だから、僕の返事は「無理かもしれない」と捉えてもらえればそれで十分だと思う。
そのやり取りを終えて、ソラにミアの居場所を尋ねようとしてすぐ。
「ユーガぁ……」
シズクの声はか弱く、いかにも女の子といった声音だった。
「お前がそうだと、僕の方が調子狂うな」
「……ユーガらしい」
そう言って、僕らはお互い笑いかける。シズクは一度だけ頷いてから。
「兄さんみたいにならないでよ? もしユーガがそうなったら、私……」
間を置いたのは数秒の事だっただろうか。衰弱の関係もあり、シズクはいつもの調子で言葉を紡ぐことができないようであった。明らかに気弱な発言に、僕はただ黙して待つ。
――しかし、彼女が首を強く横に振って、無理した声を出して。
「ユーガがそうなったら、私、許さないから! 裏切ったらユーガなんて殺してやる!」
彼女らしい発言だったが、その瞳から流れた雫が、どれだけ苦労して押し出した言葉だったのかを表していた。
「わかったよ。シズクに殺されないようになんとかしてくる」
まったく、殺せとか殺すとか、どうしてここの女性陣は物騒な発言しかできないのやら。
それなのに、こんな劣悪な環境の中で、どうして僕は笑っていられるのだろうか。そんな事を考える余裕があるだけ、今の僕は恵まれていると思う。
……そんな環境を潰そうとする、ミアをなんとかするためにも。
「さて……じゃあ、行くか」
「はい」
ソラの返事を受け取り、僕らは踵を返した。夕暮れが迫る中、山の入り口はまるで地獄の底を思わせるような闇を作り出している。そこへ、僕らは向かっていく。
「……ユウガさん」
ポツリと零したソラ。
「ユウガさん、死なないでくださいね」
それは、ソラの独白のようだった。僕は答えず、彼女の声に耳を傾ける。
「どんなことになっても、私は、ユウガさんの式神です。……アサガオの花が好きだと言ってくれたときから、ずっと、あなたの式神ですから。……それが、人の夢だったとしても……儚いものだとしても……私は、式神です」
「……何が言いたいんだ?」
僕の問いかけに、彼女はアサガオの花を思わせる、大きくて綺麗な笑顔を咲かせた。
「これからもよろしくって言いたいだけです」
不安を拭い去ろうと、その花は美しく咲こうとしていた。